ヒットチャート関係の話

ただ私自身は直ぐに意見を書かないで良かったかな。当時なら感情論でやり過ごす事は出来るかもしれないけれど、そもそも問題の本質って何?っていうのは別のところにありそうなので。
整理すべき事は二点『チャート工作』と『予約数を売上数とはしていない』かな。

        • -

まず『チャート工作』には二通りの手法が噂されているということ。ひとつは「メーカーがCDを買い占める」、もうひとつは「メーカーがチャート調査会社の担当者に直接働きかける」。

まず、世間的な興味は後者なんでしょう。ただこれに関しては実際に行われているどうかは証人を確保する以外に判断のしようがない。江戸時代ならば「くのいち」にお願いして屋根裏に忍び込んでもらう事が出来たんでしょうけどねえ...「くのいち」役は美勇伝でお願いします。うーん、たまらんちん(苦笑)。あ、そんなことじゃないか。

前者についてはこれは私の経験ですが、私が一時期在籍していたある会社では、ある雑誌の創刊企画に関わったことがあるのですが、実際そのような事を行う業者を使った事があります。出版界のヒットチャートは特定の書店のものが利用されるので、そこを狙い撃ちすればいいとのこと。私はその業者の方にお会いした事は無いのですが、もし機会があったならば「音楽業界も一緒ですかね?」って聞けば良かったな(笑)。

ただ私が体験した雑誌の場合は経営者の自己満足でチャートインさせたのではなく、これは取次(トーハン/日販といった書店向けの問屋のこと)対策の一環で、要は中小出版社の発行部数は半ば取次が握っていて、次号に向けての好材料を用意しておく必要があるのだとか。
そう考えると、例えばTV業界における視聴率上昇により広告収入が増えるといった好材料をCDチャートに求めているのならば、プロダクション的にはTV出演が期待出来るなどの効果もありますが、メーカーサイドからすれば次回作のディスプレイを優先的に割り当ててもらえるといった効果を期待できそうです。
(その視点で見ると、UFWは逆に、新規顧客開拓に金を使うのではなく、効率的に予約数を増やしていく方が良いと考えているかもしれないよなあ...)

        • -

もう一つ『予約数を売上数とはしていない』について。

予約には二つあって「発売日以前の予約」と「発売日以降の予約(追加受注)」。
ファンが立ち上げたヒットチャートランクイン企画では「オリコン協力店で購入しましょう」というのは定石ですが、その中に「もし売り切れていたら予約して下さい」ということが書いてあるのを見た事があります。ただこれは集計期間内に間に合わなければ意味が無いように感じます。
なので概ね「発売日以前の予約」のことが問題になっているのかと。

そのあたりの事はこちらの取材によって明らかになってきていますが...

例えばアイドルですね。ハロープロジェクトのファンは「イベント券目当ての空予約」がとても多いんです。一人でたくさん予約することでお目当てのイベント券が手に入りやすくなる。無事手に入ったらあとの予約はキャンセル、みたいなことは日常茶飯事です。予約の数値が入っているのなら、こういう特殊なアーティストのランキングが上がってこなければおかしいわけです。でも、プラネットやサウンドスキャンとランキングを比べたときにそういう話は聞かない。

...ははははは。やはりそうなるか。
やっぱりCDショップ別特典とかの方が有効なんじゃないですかねえ。> UFW
そんなことより、重要なのはこちら。

――1つの論点ですよね。昔のチャート集計はどうだったのかというところは。

B氏:僕がチェーン店にいたころは、オリコンチャートのための報告は地区の事務所がかなり適当な数字をあげていたと記憶してます。なにしろPOSもない時代だったし、何よりいろいろ報告しなくちゃいけない集計データが多かった。自社内で上に提出する報告はデタラメを書くと怒られるのできちんと書いていましたが、それ以外の集計データなんて適当もいいところだったんじゃないかな。

――もう1つの争点になってる「予約を含めていたかどうか」についてはどうですか。

B氏:平成元年頃の記憶だから、曖昧な部分もあるんですけど、当時予約分というのは店頭から下げて「取り置き」していたため、初回発注数から店頭に出した分を引き算して「売上げ実績」としていたはず。だから、オリコンが「予約分を含めたことはありません」というのは実態に即していないんじゃないかな。

確かに本部(経理部)に対する売上報告じゃあないので、そういう運用をされても仕方無いでしょうねえ。 私は雑貨小売店のPOSシステムを開発した事がありますが、POS導入前はこんな感じで売上数を算出してました。

  • 前期末の棚卸数+期間内の仕入数−今期末の棚卸数=売上数
  • 棚卸しないかぎり正確な売上数は把握不可能
  • とは言っても盗難や破損やサンプル持ち出しを上手く管理しないと売上数に含まれてしまう
  • 棚卸数は会計上必要なものであって、損益報告ベース(月次あるいは四半期、半期など)といったサイクルで行われることが多い

売上数は売上原価の算出方法を応用したものです。
多忙な店舗スタッフにチャート調査会社対応のために週次で棚卸させるのは不可能に近いと思います。さらに一私企業の向けの調査報告資料は会計上のルールは特に関係ないので、店舗スタッフに負担をかけずに本部(事務所)の方で納品書から推定値をはじいた方が楽でしょうね。その場合「取り置き」は売上数に含まれる事になると思います。
で、POS導入後はこうなります。

  • JANコードやインストアコードによる単品管理が可能(要マスタ登録)
  • 売上時にJANコードと売上点数がデータ化されるので、それを集計すればよい
  • 但しそのシステムできちんと在庫管理しているのかは不明
  • 多くのシステムには、レジシステム以外に、外商用のシステムが用意されている

利点はシステム上で仕入/売上/在庫数が把握出来ること。
ただ、盗難や破損等をこまめに処理しておかないと徐々に実在庫数と離れていき結局は棚卸で帳尻をあわせてしまう傾向になりがちです。ショップへ行くとPOSなんだけど「在庫見てきます」というシーンは今でもよくあります。それはオペレーション上問題ない事ですのでシステムの評価には直接結びつきませんが、意図が伝わらないと『現場はマシンの在庫を信頼出来ない→システムを軽視する』といった傾向が出てきます。
ただ売上数はレジを通すことにより正しい数値が瞬時に把握できますので、POSを導入する意味は大きいです。これにより「取り置き」は売上数に含まれない事になりますので、A氏の意見はこのことを言っているのでしょう。

ちなみにPOSが馴染まない分野もあります。例えばアパレル業界。GAPとかUNIQLOといった大量生産品やセシールの様な通販ではなく、季節もの一点もので流行に左右されやすいショップでは単品管理の意味が無い。芸術品もそうです。八百屋など価格が変動するものもそう。
シングルCDや雑誌はJANコードが付いている大量生産品とはいえ、季節商品的なもので、売れなくても返品すればいいというノリでやっているのであれば、私的にはPOSシステムを入れる必要も無いようにも感じられますが、それじゃあビジネスにならんのでしょうね(笑)。

さらに、ここで「外商」といった言葉が登場します。外商は店舗外のでの商売ですからPOSとは直接関係ありませんが、管理の効率化によりPOSの店舗マスタと商品マスタを利用し運用するところも多いのではないかと。
例えば雑貨店ですと「ギフト用に企業マーク入りの名刺入れを5000個」なんていう注文がきた場合、ある店舗の日々の売上に含めると異常な数値になってしまうため、外商専門の店舗コードを別に設けそこで処理したほうが利口です。
CDショップで外商ってなんだろう?...ライブ会場でCD販売する際にメーカー直販ではなくCDショップが出張販売していますが、あれがもしかしたらそうかもしれませんね。売上を現場で手集計して、本部(あるいは特定の店舗)に戻り売上データの合計値をインプットしているのかと。
で、「E氏」の指摘...

現在のオリコンの集計はチェーン店舗のまとめたPOSデータを送信しているだけなので、今は足を使わず、本部一括で買取作業が行われているんじゃないですかね。最近だと、レコード会社の方から小売店に「買い取りやってくれ」なんて依頼もあります。しかも「卸価格を下げさせてくれ」というおまけ付き(笑)

...は、この外商に疑いを持たれてしまうかもしれません。
リアルに人が並んでいるハロプロ系だとそういうことは無いでしょうが、小規模のインストアイベントなのに何故かチャートに影響が及ぼされてしまっている類のアーティストは怪しまれるかもしれません。
さらに、もしかしたら現品ではなく伝票のみが動いているなんてことがあったら...なんて悪い想像もしてしまうんですけど、それはどうなんだろう?

        • -

ヒットチャートの信頼性については、サンプル調査である以上完璧ではありませんが、信頼出来るものだと思っています。
ただ、POSシステムの導入により、全国展開のショップや大規模通販などは独自の集計が可能となる事で、得意分野をより伸ばす傾向が強まります。例えば石丸電気ならばアニメやアイドル、新星堂といった小規模店舗の集合体ならば予約販売の充実などが生命線かなあ...とは思います。

そうなると汎用的なヒットチャートは用をなさなくなるかと言われればそうじゃないと思います。店舗運営には店頭での売れ筋商品も必要不可欠であり、ヒットチャートはその面での指標として生き残っていくのだと思います。

それと、次回作のためのヒットチャートという流れが長らく続いている事が残念かな。今の商品を売るためのヒットチャートに出来ればして欲しいです。