アニメファンとアイドルファン

そろそろコラムっぽいのも復活させたい今日この頃。
やや古い記事ですが...

水樹奈々、平野綾、堀江由衣… 声優は今やアイドルだ(J-CAST)

今って第何次声優ブームなんだろう?

...って、これ書いている連中は売上不振のJ-POPと比較して好調のように見えるアニソンに注目しているだけかと。
当事者(中の人たち)はあまりブームだと浮かれないように(変なブームに巻き込まれないように)して欲しいところですが...ただ、この手の記事が目だち始めていることや、我が軍がアニメ・ゲーム方面の仕事の場を広げたこともあり、知人からアニメ系の音楽のトレンドを尋ねられることはある。その際、私は「日本の中にもうひとつ別の国があって、その国の音楽だと思えばいいよ。でもそれは小型版の日本であって、中身はそんなに変わらない。」と説明しています。「別の国」とはアニメ王国なのかゲーム王国なのか、それとも「ゆかり王国」なのか...まあざっくばらんにオタク系の社会が日本にもうひとつあるってこと。
(コンピュータマニア的には「日本というマシンの上で『オタク文化』という仮想マシンが動作している」って表現もアリかな。)

それは、別に隔離されたカルトな世界...と色眼鏡で見ている訳ではありません。まあ中にはユニークな曲やムーブメントもありますけどね。でも全体から見るとそんなに色眼鏡で見る必要はないかな。彼らは「漫画・アニメが好き」という集合体であり、特定の音楽ジャンルに偏っているわけではないということを表現しています。

ファンの総人口は、どうなんだろう...1千万人はゆうに超えているでしょうかね。もし活きた購買層が2千万人超ならば、欧州の各国と同等のマーケットにはなる。宇宙戦艦ヤマトに熱中した大学生はそろそろ50歳を迎えつつあるでしょうから、人口比などを考えても一つの国と例えるのは間違いではない。

その国で流行する曲は、多少「打ち込み>アコースティック」な傾向はありますし、ヒップホップやレゲエみたいにファッションと直結した音楽はあまり流行りませんが、それ以外は一般的なJ-POPと似た傾向がある。ガンダムタイアップなどはこの路線を上手く消化しています。

その一方で、自分の音楽のベースになっているものへの支持も忘れない。水樹奈々はロックボーカル志向、田村ゆかり堀江由衣はアイドルポップス(キャラソン)志向なので、それぞれに熱狂的な支持者はいます。が、その逆というか、アニメファン全体が彼女達を応援している訳ではない。それは日本の国民の中の支持層の比率と、それほど変わらない印象。

では何故売れるのか?...漫画・アニメファン層があまりにも多いことは書きましたが、それに加え、主題歌といった避けては通れないポジションを今でも守っていて、ニコニコ動画などのコミュニティーが充実していることから、楽曲に直に触れる機会が比較的多いこと。さらに購買力も安定していると思われるので、相対的に浮き上がってくるのが現状かと。

その傾向に気がついたのか、近年は芸能事務所系の声優さんも増えています。が、今後どうなるかは分かりません。その世界に順応出来るところが生き残っていくだけかと。
もしかしたら...いやもう既に例の悪名高い仕掛け人氏も参入しているかもしれませんが、馬鹿にされるだけですから止めた方が無難かと。あからさまな路線を貫いても売れないのは一般社会もアニメ王国も一緒。

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それとは別に、日本の中の別の国といった表現を使うもうひとつの理由として、海外の邦楽好きたちが聞く音楽が、いわゆるA-POPだとしたら、一般的な日本人はそれらの曲はほとんど知らないですから、彼らとの意思疎通が取れない可能性が高い。でも、オタクならば個々の曲は知らなくとも、作品やジャンルの傾向から、大体の察しはつく。その違いは大きい。

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さらに。
それと同様の理論展開はアイドルファンにも可能。
私は「アイドル好き=オタク」という考え方に疑問を持っている。

のめりこむと、その子やそのユニットに関する情報に極端に詳しくなる傾向があるので、確かにオタクとみなされやすいのが現状ではある。でも、その人からアイドルを取り除いた普段の生活に、オタク的な要素があるかというと、これもまた千差万別。旅行好き・スポーツ好きなどアウトドアなアイドルファンも多い。なので、その子との擬似恋愛に破れてしまったら、この世界から足を洗ってしまう人は実に多い。

その為なのか知らないですが、漫画・アニメファンが多用する「オタ(ク)」ではなく、アイドルファンは「ヲタ(ク)」という表記を好む傾向がある。言葉の発祥プロセスの違いも確かにあるでしょうが、やはり「オタ」とは違うんですよね。

つーか、そもそも(擬似)恋愛を「趣味」と言われてもねえ。
これは「趣味はアダルトビデオ鑑賞です」なんてひとが殆どいないのと一緒。
でも、それって「趣味」として確立されていないから、アイドルファンが日陰者扱いされることもしばしば。

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この理論を合わせると、実は漫画・アニメにもアイドルポップス率が高いカテゴリがあるのですが...ただ、それもやっぱりちょっと日陰者な存在かもしれない。
でも、これを抑えておくと、アイドルポップスファンが、漫画・アニメにおけるアイドル的なものにアプローチするコツが分かってくるってのはある。

能登くんなどは、そのあたりに上手くアプローチするんじゃないかなと。
期待したいところです。