つんく♂さんのインタビュー

ナタリー - [Power Push] モーニング娘。「ブレインストーミング / 君さえ居れば何も要らない」特集 (5/6)

ネットが日常化されて感想文を書く人が減った

──モーニング娘。が結成された90年代末から2000年代前半って、今みたいに携帯やスマホからインターネットができる時代ではなかったんですが、一部のファンの人たちの間では自分たちの曲の解釈や解説をネット上にアップして、ファン同士の交流を深める文化がありました。それはつんく♂さんはじめ、制作サイドから説明がなかったからだと思うんですが、今は逆につんく♂さんのほうからセルフライナーノーツで「この曲はこうです」「こういう意図で作りました」と先手を打ってるわけですよね。

そうなんですよね。だからネット社会が始まって「2ちゃんねる」ができた頃は、ネットに参加してる連中っていうのはすごく能動的で。当時はモーニング娘。に限らず、人気アーティストのアルバムが出たらその感想文を自分のホームページで書く人がすごく多かったんです。「この曲は○○の『××』っていう曲のイントロのオマージュで、これこれこういうふうになってる」とか「この歌詞の意味は、きっと△△さんはこういう思いを込めて書いたんだろう」とか、1曲1曲を自分なりに解説して。「つんく♂が今回の曲で安倍なつみをセンターに持ってきたのは、やっぱりこれこれこういう理由なんだよ。『ASAYAN』を観てもこうだったし」とかね、嘘でもええから書いてるんですよ。まあそれを「ああ、こいつマニアックやな」とか「それは違うな」って思いながら読んで(笑)。

──あはははは(笑)。

まあそれは僕に対してのアンサーを含めて、自分たちでライナーノーツを作ってたわけですよね。でもそこからmixiとかSNSを経て、今はTwitterやLINEに移行した。ネットが日常化されていけばいくほど、そういう感想文を書く人が減っていった気がしていて。例えばAKBのCDをゲットしたとか、「Now Playing ○○」みたいなことを書くんですけど、その先の感想がないんです。ネットが普及したことでいろんなことが短縮化、簡易化されて、物事を書くということがおざなりになってるのかなっていう危機感を感じてるんですね。そんな文章を書くことがおざなりになってる中で間違った情報が上がらないためにも、「ここまで書かなくても普通は気付くでしょ?」みたいなことまで書いておかないといけないなと思っていて。僕が発した言葉に対して「そんなわけないやんけ!」って言ってくる人すら少なくなってますからね。その危機感みたいなものは非常に感じています。

──確かにブログが主流だった頃にはまだそういう感想文ってたくさんありましたよね。

あったんですよ。それは音楽だけじゃなくて食べものに関しても一緒で、ラーメンを食べてどんな味で、店がどんなふうになっていてと、自分なりに解説があったんですけど、今はもうない。(「Foursqure」などのスマホアプリで)チェックインで終わりですよ。

──それこそ140文字ですべてを伝えようとする文化になってきてますし。

しかも140字使いきる人はほとんどいないですから。ラーメンの写真がポーンって上がって終わり。感想もないから。

戻ってきたほうがいいのかなあ。
ただ、あちらさんもまだ存続はしているのでネタになりそうなものは書かないようにしたいですけどね。